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2018 2018.07.04 スタートアップ企業の成長を加速させるマーケティングの挑戦


株式会社SmartHR 代表取締役 CEO 宮田 昇始氏、COO 倉橋 隆文氏

煩雑な労務手続きや従業員情報の管理をWeb上で完結して行える、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供する株式会社SmartHR。「SmartHR」は2015年11月のサービス提供開始以来、右肩上がりで急成長を遂げており、2018年2月には利用企業が1万社を突破。深刻な人手不足や働き方改革に対する企業の取り組みをSmartHRで後押しする同社の経営やマーケティングに対する考え方について、代表取締役 CEOの宮田 昇始氏と、COOの倉橋 隆文氏に、ビッグビート 代表 濱口 豊がお話を伺いました。
 

世の中の課題を解決するヒントを見つけた理由

濱口:「SmartHR」は御社にとって、3度目の挑戦となるプロダクトだったそうですね。
 
宮田氏:はい。共同創業者のエンジニアと私の2名で起業したのは、5年半くらい前のことでした。自分たちの代表作となるプロダクトを作ろうと意気込んでいたのですが、当時はまだ”世の中の課題を解決する”とか”ユーザーの声を聞いて開発する”といった視点を持っていなかったので、自分たちにできることは何かという机上の空論でプロダクトを作っていたんですね。
 
それで2個のプロダクトが失敗して、受託開発をしながらギリギリ食いつないでいる時期があったのですが、そうして会社の口座残高がどんどん減っていく中で、プライベートでは妻が出産を控えていて、次こそ必ず成功させなければという危機感がありました。
 
ちょうどその頃、「Open Network Lab」というシードアクセラレータープログラムに入ることができて、”自分たちのプロダクトの作り方はユーザーの課題を解決していなかったことが敗因だ”と気づくことができたのも、大きな転換となるきっかけになりました。



濱口:3個目のプロダクトを開発する際に、なぜ人事労務管理の領域に着目されたのですか?
 
宮田氏:実は2個目と3個目の間に9個の事業アイデアを潰しているので、「SmartHR」は世に出たプロダクトとしては3個目ですが、作ったものとしては12個目になります。潰した9個のプロダクトにはなくて、「SmartHR」にあったもの、それは”自分たちがやる意義”でした。
 
”「誰の?」「どんな課題を?」「どうやって解決するのか?」「市場規模はどれくらいか?」「既存の代替品は何か?」「あなたがやる意義は?」という6つの質問に答えられなければ良いプロダクトにはならないから、開発するのはやめたほうがいい”とシードアクセラレータープログラムのメンターから言われていて、最後の質問に答えられるものがなかなか見つからずに苦戦していました。
 
そんなときに妊娠9ヶ月の妻が自分で産休・育休の手続きをしている様子を目撃して、「ちょっと待って!」と写真を撮らせてもらったんです。産休・育休は社会保険の手続きですが、明らかに大変そうなのに、それを便利にするソリューションの存在は、聞いたことがない。もしかしたら、これは良いプロダクトを作るチャンスになると思ったんですね。
 
濱口:確かに、会計ソフトは昔からありますが、人事労務はExcelで管理するのが主流でしたから、素晴らしい着眼点ですよね。



宮田氏:アイデアのきっかけとなったのは妻が苦労している姿でしたが、実は社会保険手続きには自分自身にも関係があったんです。私は過去にハント症候群という難病を患ったことがあり、そのときに社会保険制度で、2ヶ月くらい生活費を保障してもらえたおかげで、ゆっくりと療養に専念して完治できたという経験がありました。もし、この社会保険手続きが煩雑だという理由で、手続きに不備があって、受給が遅れたり受け取れなかったりしたら、私のように安心して療養できない人が出てくるかもしれません。これは自分たちがやるべきビジネスだと、確信したんです。
 

価値観と情報が同じなら意思決定は現場に任せられる

濱口:宮田さんは経営において何を重視していらっしゃいますか?
 
宮田氏:よく言っているのは、私のスタイルは「100問の問題を50人で2問ずつ解く経営」と例えています。スタートアップが上場までこぎつけるというのは、「どんなプロダクトを作るのか?」「どの市場を攻めるのか?」「エクイティストーリーをどうやって作ろうか?」「監査法人をどうやって選ぼうか?」といった多岐にわたる難問100個を解くようなものだと思っているんですね。それを経営者が一人で全問を解こうとすると、ものすごく時間がかかってしまいますし、目標の達成から遠くなってしまいますから。
 
とはいえ、メンバーに「みんなで問題を解いてください」と言うだけでは前に進めないので、会社として気をつけているポイントが2つあります。”価値観が同じであること”と”持っている情報が同じであること”です。同じ価値観で、持っている情報が同じであれば、意思決定が似ると思っているので、経営陣だけで意思決定するのではなく、現場で意思決定をしてもらうようにしています。
 
そのために、まずは価値観が同じ人を採用しています。それは評価制度にも組み込まれていて、会社の価値観に合致した行動が多いと、昇給しやすいしくみになっています。採用面接の際には、会社の価値観が自身の価値観と合うかどうかを、候補者の方にも真剣に考えてもらうようにしているんですよ。
もう一つの、同じ情報を持ってもらうことについてですが、具体的には、メンバーの給与や個人面談の内容以外は、すべての情報を自分で取りにいける状態になっています。細かいKPIや、制度を作る過程の議事録、会社の残高、ベンチャーキャピタルと出資の話をした内容まで見えるようになっていますよ。あとは毎週、経営会議をやっているのですが、その後、全社的に説明する時間を40分くらい取って、その場で挙がった質問にリアルタイムで答えるようにしています。



濱口:予算取りも現場の意見で決まっていくのですか?
 
宮田氏:そうですね。我々のようなSaaSビジネスではメトリクスがたくさんあって判断しやすくなっています。例えば、LTV(ライフタイムバリュー)をCAC(カスタマーアクイジションコスト)で割った数字が3より大きければ、どんどんアクセルを踏んでOKで、それより下回っていれば見直したほうがいいという指標がありますので、マーケはその範囲に収まる施策であれば自由に進めてもらっています。年間で3を超えられればいいので、柔軟にメンバーが意思決定できるようになっていると思います。大型の展示会出展の話でも、直前まで私が知らないということもありました。
 
濱口:価値観と情報を揃えるという経営手法に至ったのは、何か試行錯誤があったのですか?
 
宮田氏:そういう考え方でやろうと決めたのは2年前くらいで、まだメンバーが9名くらいの頃です。当時はプロダクトをローンチしてから半年くらいの頃だったので、プロダクトの開発会議にも出ていたのですが、私は営業に出突っ張りで自分がボトルネックになっていると感じたんですね。開発メンバーのほうがわかっていることも多いのだから、任せたほうがいいなと。そして”100問の難問をメンバーの人数で割って解くために、価値観を揃えたほうがいい”と先輩経営者からのアドバイスをもらいました。それだけでは足りないので、情報をオープンにすることを決めたのです。私は割とセオリー重視なので、とりあえず良いものは取り入れて、合わなければ捨てて、合いそうであればアレンジして組み込む、というやり方でやっています。
 

未開拓市場を広げるマーケティングの挑戦

濱口:御社の価値観の中で「人が欲しいと思うものをつくろう」というのがありますが、これこそマーケティング思考だと思います。ちなみに御社のマーケチームの体制はどのようになっていますか?
 
倉橋氏:今は私がCOO兼マーケティングチームのマネージャーをしていて、メンバー5人がそれぞれ専門領域を持ったプロフェッショナルとして活躍しています。広報・オンライン広告担当・オフライン広告担当・展示会/イベント担当・自社メディアの編集長の5人ですね。7月にはもう1人加わる予定です。



濱口:御社の社員は50名ほどということですから、社員の1割がマーケティングに携わっているということですね。
 
倉橋氏:そうですね。マーケティングチームとしては1割ですが、先ほどの価値観で開発、営業、カスタマーサポートも行動しているので、社員全員で携わっているとも言えます。先ほど宮田がお伝えした通り、宮田は本当に口を出さずに任せてくれています。
 
濱口:マーケティングの戦略として強化されているところはどこですか?
 
倉橋氏:マーケティングチームのミッションとしては、「SmartHR」というサービスを知ってもらうことはもちろんなのですが、その前に、”労務手続きを便利にするソフトウェアがある”という概念がまだ十分に広まっているとは言えない状態なので、そこの認知を高めるというものがあります。「SmartHR」は、どんなものかを知っていただければ受注率は高いので、まずはクラウド人事労務ソフトの認知拡大を強化するところがひとつですね。



その上で、より具体的な今年のミッションで言うと、非IT系企業に認知を広げるところに重点を置いています。初期のお客様はIT系のアーリーアダプターの企業が多かったのですが、「SmartHR」は非IT系企業の多くの課題を解決できるプロダクトでもあります。例えば飲食や小売など多店舗展開されている企業では、アルバイトが多くて人の出入りが激しく、その度に労務手続きが発生します。さらに、その手続きを本社と店舗間で郵送やファックスでやっていると、時間や郵送コストがかかるだけでなく、書類の書き方がわかりにくく、転記ミスが発生して、結構なロスが発生することも。そうした課題は「SmartHR」ですべて解決できますので、お役に立てる部分が非常に大きいと思っています。
 
濱口:倉橋さんには今回の「Bigbeat LIVE」にもご登壇いただきますが、最後に御社のマーケティングにおける今後の取り組みについて、教えてください。
 
倉橋氏:弊社のお客様は、人事の中でも労務担当者です。過去に労務担当者向けのサービスは、ほとんどなかったので、マーケティング手法が確立されていないんですね。どうやったらリーチできるかという問いに対して、今後も失敗を恐れずにチャレンジを続けていきたいですね。大胆に投資して派手に失敗したとしてでも、短期最適の思考には陥らないよう、果敢に新しいチャネルの開拓に挑んでいきたいです。
 
濱口:ありがとうございました。8月1日のお話も楽しみにしています。
 
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【株式会社SmartHRについて】
SmartHR社(旧KUFU社)は2013年1月23日に創業。2015年11月に、社会保険・雇用保険手続きの自動化を目指す、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」の提供を開始。2018年2月には利用企業が1万社を突破した。社会保険・雇用保険の電子申請対応型クラウド労務管理ソフト シェアNo.1(2017年1月 シード・プランニング社調べ)
グッドデザイン賞、HRアワード「人事労務管理部門」最優秀賞、TechCrunch Tokyo 2015 最優秀賞、B Dash Camp 2016 Fukuoka 優勝、Infinity Ventures Summit 2016 Spring 優勝
経済産業省およびNEDO、JETOROによるスタートアップ支援プログラム「J-Startup」認定企業

■会社概要
社名:株式会社SmartHR / SmartHR, Inc.
代表者:代表取締役 宮田 昇始
事業内容:SmartHR の企画・開発・運営・販売
設立:2013年1月23日
資本金:20億7,613万3,330円(資本準備金含む)
所在地:〒102-0083 東京都 千代田区 麹町2-1 PMO半蔵門 9F
従業員数:59人(7月1日現在)
会社HP:https://smarthr.co.jp/
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