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2018 2018.08.14 LIVEレポートVol.1- 自由なBtoBマーケターになるためのStruggle



前回(2017年)好評だったBigbeat LIVEが、今年も8月1日(水)に東京・紀尾井カンファレンスにて開催されました。このレポートでは、Bigbeat LIVEの1st Sessionに登壇したNKアグリ株式会社 山川空さん、株式会社SmartHR 倉橋隆文さん、ウイングアーク1st株式会社 野島 光太郎さんの講演と、ホスト役を務めたシンフォニーマーケティング株式会社 庭山一郎さんのお話を紹介いたします。
(取材・執筆:岩崎史絵)
 

BtoBマーケターの奮闘(Struggle)こそが共感と行動を促す

1st Sessionのホスト役として、最初に壇上に姿を表したのは、約30年間BtoBマーケティングの世界に身を投じてきたシンフォニーマーケティングの庭山一郎さん。大ファンだという矢沢永吉“GET UP”をBGMに登場しました。


ビッグビート代表 濱口により、YAZAWAタオルをかけられた庭山さん。



1st Sessionのテーマこそ「マーケティングを経営の最高の機能にする。」ですが、庭山さんは講演を行う3名のBtoBマーケターには、あえて「カッコいい成功エピソードは話さないでほしい」と依頼したそうです。
 
その理由は、ズバリ「カッコいい話は面白くない」から。「カッコいい話はどこでも聞けますが、それは聞き手の方のモチベーションになりません。同じ立場であるBtoBマーケターが悪戦苦闘する姿を会場のみなさんと共有し、『自分も頑張ろう』と行動を促すほうがずっと意味があります。講演を聞いて満足するだけではなく、みなさん自身が明日から新しい挑戦と創造に奮闘できるよう、講演者の方には戦っている自分の姿をありのままにお話しいただきたいと思います」と庭山さん。
 
さて、登壇したBtoBマーケターのみなさんは、どのような奮闘を続けているのでしょうか。
 

社員15名の農業ベンチャーが取り組む社会を変える全員マーケティング

NKアグリ株式会社 VCM(Value Chain Management)部 販促・PR担当の山川空さんは、2013年に新卒でサイボウズ株式会社に入社、広告・広報部門を経て2017年にNKアグリにジョインしました。



NKアグリは、世界的な写真現像機器メーカーであるノーリツ鋼機の社内ベンチャーとして2009年に設立された企業で、植物工場で野菜の生産・販売および研究開発を行なっています。同社が開発・生産・販売している人参「こいくれない」は、通常人参にはほとんどない栄養素・リコピンを豊富に含んでおり、豊かな甘みも備えたNKアグリを代表する製品です。
 
そんな同社ですが、なんと社長以下社員15名全員、農業経験がありませんでした。素人だったからこそ、逆に消費者が本当に求めている味・栄養素にこだわった価値ある農作物を生産できたそうです。
 
これを推し進め、いま同社が目指しているのは、「届ける野菜本来の価値を損なわず、バリューチェーン一丸となって商品を届ける」こと。実は農業では、本来消費者が求めている食感や味、栄養価で野菜を評価せず、流通では重量感が重視され、市場に出回る野菜の供給量の多寡によって価格が決まるのが現状です。
 
NKアグリでは需要が高まりそうな時は生産を増やし、生育がうまくいかないときには営業を抑えるなど、生育情報を分析して需給調整を行うことで価格変動を抑え、野菜本来の価値を適正価格で提供しているそうです。こうした消費者を向いた野菜づくりをするために、種農家や野菜農家、流通などバラバラだった一連の工程をバリューチェーンとし、野菜の価値をそのままに市場に届ける「農業マーケティング」の実現を目指すことにしました。
 
山川さんは、バリューチェーン全体のコーディネーターであり、同時に市場と生産者の間を橋渡しするBtoBマーケターとして挑戦を続けています。新しい農作物の研究開発のため、大学や企業に働きかけたり、流通網を整備したり、商品規格を考えることもあります。Facebookを通じて野菜農家さんの実務を動画や画像で発信したり、野菜ソムリエさんのコミュニティを作って消費者に直接こいくれないの良さや調理法をレクチャーする取り組みも行っています。



これまで農業の歴史において、こうした取り組みはもちろん初めてのことです。当然その道は平坦ではありません。これを乗り越えたのは、「未来の農業のため」という共通の社会課題があるからです。「この課題に共感する人たちを集め、そこからできることを一歩一歩実現していくのが、NKアグリが挑んでいる農業マーケティングです」と、山川さん。NKアグリの奮闘はこれからも続きます。
 

失敗を恐れず、成長を加速させるSmartHRのマーケティング

続いて登場したのは、SmartHRの倉橋隆文さん。人事労務特化型のクラウド型ソフトウェア「SmartHR」を開発・提供するベンチャー企業のCOOです。



SmartHRは面倒で煩雑な人事労務業務を効率化し、ペーパーレス化するソリューションとして、2018年7月末現在1万5,000社以上が導入しています。リードタイムが短く案件確率も高い反響型(インバウンド型)営業で、事業は急成長しました。
 
そんな同社のマーケティングのミッションは、事業の成長スピードを加速し続けるること。そのためには新しいチャネルを常に開拓し続けなくてはならず、人材もコストも含めてマーケティングには大きな投資を行なっているそうです。2016年には本格的に運用型広告を開始し、オウンドメディア「SmartHR Mag.」もスタート。「働き方改革」という時代の流れや、様々なマーケティング・PR活動を実施して知名度は一気に上がりました。



その一方で、失敗した施策も数知れず。テレビCMに合わせ、オンラインメディアの広告枠に数百万円を投じて出稿したものの、結果は惨敗。ユーザーの割合が増えてきた飲食業界のイベントに出展するもターゲット層が違いブースは閑散、メールマーケティングも思うほど効果が上がりませんでした。業界ではまだ主要な連絡手段として活用されているFAXに着目してDMを送信したのですが、反応はほぼ0だったそうです。「もともとペーパーレス化を推進していますが、あえて紙に挑戦して失敗しました」と、倉橋さん。
 
それでも挑戦を続けられた理由は、ズバリ企業文化です。成長を加速し続けるには、リスクを取りつつ施策を実施してPDCAを回し、試行錯誤を重ねるしかありません。
 
「当社には『自律駆動』と『ワイルドサイドを歩こう』という価値観があります。こうしたカルチャーの下で、社内に施策の必要性を啓蒙して予算を獲得して、その成果を共有してきました。そして失敗と成功を繰り返しつつ、全体で平均ROIを3.0倍以上に保つという約束を守りながら自分のミッション達成に向けて日々挑戦しています」(倉橋氏)
 
倉橋さんは最後に「目標値を社内で共有し、施策を実行して得た成果をフィードバックして啓蒙すると、物事が進みやすくなるでしょう」と参加者にアドバイスしました。
 

1年半でマーケティング型組織に生まれ変わったウイングアーク1st

最後に登壇したウイングアーク1st マーケティング部 ブランドマーケティンググループの野島光太郎さん。なんと「映像機器の不具合で準備してきたスライドが映らない」というStruggle状態からの講演スタートでした。



野島さんは広告代理店や外資系IT企業を経て、ウイングアーク1stに入社しました。20年以上の歴史があるIT企業のウイングアーク1stは、技術力と営業力に定評があり、それに続く経営の柱としてマーケティングの改革・強化を目指していたそうです。野島さんの奮闘の結果、かつて営業直下だったマーケティングチームは、2018年7月現在、社長直下のチームとして経営に貢献しています。
 
野島さんが進めた施策は、コンテンツマーケティングを軸に、社内外の人に働きかけて「マーケティングの成功サイクル」を作り上げることでした。
「企業では、マーケティング部門だけでなく、営業や開発などもマーケティング活動に関わっています。たとえば製品の価格戦略などは、マーケティングよりも営業が中心となるケースも珍しくありません。こうした潜在的マーケターにより、マーケティング部門の活動が狭まってサイロ化していきます。それで問題なく進んで来た時代もありましたが、そのやり方が確立してしまったがために、マーケティング部門を含む全体でマーケティングが進められなくなりました。この『無意識のバイアス』を打破することが必要と考えたのです」(野島さん)



こうした問題意識に端を発し、2017年4月にスタートした「データのじかん」は、社内にある有益なコンテンツを市場に公開するチャネルとして、社内外に認知されるようになりました。「営業との連携を密にし、営業から聞いた有用な情報や最新事例、顧客が興味を持ちそうな面白い話はすぐにコンテンツ化します。こうすることで、営業自身が『データのじかん』の情報を自分の営業ツールとして活用する流れが生まれ、営業とマーケティングがコラボするようになりました。『データのじかん』を立ち上げてから1年半ほどですが、確実に変わってきました」野島さんは、この流れをコンテンツマーケティング2.0と定義しました。
 
「新しい取り組みを進める時には、古くからの社員やメンバーからの共感はなかなか得られません。最初は孤立もするでしょう。こうした苦労はありますが、1年続けてみれば、必ず何か変化は起こるはず。来年のBigbeat LIVEまでの間、何か1つ取り組んでみてください」と野島さんは話し、講演を締めくくりました。
 

真に自由なBtoBマーケターになるために

3名の話を受け、庭山さんはなぜ1st Sessionの裏テーマに「奮闘(Struggle)」を据えたのかを説明しました。それは奮闘・苦労しながらBtoBマーケティングの腕を磨くことが、真に自由になるために必要だからです。


「プロフェッショナルマーケターは包丁一本さらしに巻いた職人です」(庭山さん)
 
「ぼくはプロフェッショナルのBtoBマーケターとして絶対の自信があります。それは、マーケターとして自分の腕1本あれば、どの国、どの企業でも稼いで生活できるという自信です。これがあるからこそ、自分は本当に自由なんだと思います。みなさんもぜひ、真に自由なBtoBマーケターになってください」と、会場にエールを送ります。
 
明日から始める取り組みとして、庭山さんが紹介したことは次の3つです。
 
第一に本を読むこと。それも「古典を読むべき」と庭山さんはいいます。
 
STP理論を提唱したコトラーはいうに及ばず、『戦略経営の実践原理』を著したイゴール・アンゾフ(Igor Ansoff)やイノベーター理論を説いたエヴェリット・ロジャース(Everett Rogers)、そして庭山さん一押しのセオドア・レヴィット(Theodore Levitt)、デヴィッド・アーカー(David Aaker)などの著作は日本語でも出版されており、その理論はいまだからこそ理解できるものも数多くあるそうです。
 
第二に、転職すること。「一番自分が成長できる環境に自身の身を置くことは、自分に対する責任です」と力説します。
 
短期間で経験を積み、圧倒的なスキルを付けたいのであれば、マーケティングコンサルティングを手がけるサービスサイドで経験を積むのが近道です。特定のスキルやノウハウを深堀したい分野が出れば、今度はユーザーサイドに行くのがよいでしょう。「このサイクルが健全に回ると、日本企業もさらに元気が出るはずです」と庭山さんは説明します。奇しくも1st Sessionの講演者は、全員が転職経験者で、常に新しいことに挑戦し続けていますが、これは偶然ではないでしょう。
 
最後には、経験を積んだら次は海外に出ていくこと。「世界に出れば、日本のマーケティングがどれだけ遅れているか、どんな課題があるかが肌感覚としてわかります。逆にいえば、世界に出なければいつまで経っても世界との違いはわかりません」(庭山さん)



海外に行く場合は、できるだけ1人で行くことがお勧めだそうです。情報交換の機会を生かすのなら、日本人同士でつるんでいては、せっかくの情報交換の機会も生かされません。「英語が苦手でも、1人でいれば知り合いが増えるチャンスは広がります」と庭山さんは説明します。
 
スキルを身に付ける、勉強する——そうして奮闘してきた結果があれば、自分から「仕事を選べる」自由なBtoBマーケターとして活躍できるはず。庭山さんは最後に「BtoBマーケターの未来は明るい」と力強く語り、真に自由なBtoBマーケターになるために「Be Struggle!」というメッセージを残して、1st Sessionを終了しました。

※当日の様子は「#BigbeatLIVE」でたくさん発信されています。どうぞご覧ください。








 
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