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対談 2018.11.20 「課題先進県」高知県のマーケティングを聞く



少子高齢化、過疎化、人口減に伴う経済規模の縮小―日本全体の問題ですが、中でも代表濱口の出身地である高知県は全国より高齢化が10年先駆けて進んでいると言われるそうです。
そんな「課題先進県」である高知県庁から、産業創造課の武市正人さんがオフィスにお越しくださいました。
武市さんは、東京でシステムエンジニアとして7年間働いた後に、Uターンで2012年高知県庁に入庁。現在はIT・コンテンツ産業の振興や企業誘致を担当されています。
今年に入って2度、「コミュニティリーダーズサミットin高知」(=通称CLS)というイベントを主催し、高知県の抱える課題の解決に向けて精力的に活動中。
マーケティング的な視点から、地方自治体の取り組みや県庁の仕事について、武市さんにお聞きしました。

ちなみにビッグビート高知部のメンバーも参加させていただいた、CLSのイベントレポートはこちら。
第1回 コミュニティリーダーズサミットin高知(初鰹)
第2回 コミュニティリーダーズサミットin高知 リターンズ(戻り鰹)

 

高知県庁は「課題先進県」のマーケティング部 

濱口
いま高知県は大きな問題に直面していますね。
 
武市氏
はい。これまでは就職先がなく若者が県外へ出ていってしまうため、全国より高齢化が10年先駆けて進んでいると言われています。
でもこれは、どの都道府県より課題が顕在化している=ビジネスチャンスもそこにある、ということ。
県としては、農林水産業や地場産業を盛り上げよう、と地産外商活動(県外での購買促進)に取り組んでいます。
僕自身のミッションは、IT・コンテンツ系の企業を誘致すること。若い人にも人気があり、インターネット環境さえあれば働ける仕事を増やし、若者の県外流出を防止するとともに、IターンやUターンも促そうという取り組みです。


高知県 商工労働部 産業創造課 主幹 武市 正人さん

濱口
最近マーケティングを勉強されていると伺いました。
 
武市氏
活動する中で、マーケティング界隈の方と関わることが多くなり必要を感じて(笑)。勉強してみてわかったのは、それまで自分が「こういうふうに手を打てるな」と考えていたことはすべて、マーケティングで説明がつくことだったんだな、ということですね。
 
濱口
県を一つの企業に例えると、県庁はマーケティング部のようなものじゃないかという気がします。
 
武市氏
はい。「マーケティングそのもの」と言われたこともありますね。県庁の人間は「マーケティング」という言葉こそ使っていませんが、同等の意識は持っていると思います。
 
 

「ひろめ市場」文化+新コンテンツで、より魅力ある高知へ

濱口
マーケティングって、簡単に言うと「選ばれるための活動」。モノを売ったりヒット商品を出したりするには消費者から選ばれることが大事だし、採用の視点でいえば、働く先として選ばれなければならない。いろんな意味で「選ばれる」って大事ですよね。
「買いたい」「働きたい」という感覚って、その企業の文化や風土が大きく影響すると思うんですが、「高知」のことはどう好きになってもらって、どう選ばれたいとお考えですか。


ビッグビート代表 濱口

武市氏
今のところ、来てくれた人たちが気に入ってくれるのは「南国で海がある」「釣り・サーフィンができる」という自然環境や、「ひろめ市場があって、飲んだらすぐ仲良くなれる」という飲みの文化です。
これらは以前から、すでにあるもの。これからは「高知で今、面白いことが起きてるよね」みたいなイメージを持って好きになってもらいたいというのが、個人的な希望です。
特にIT・コンテンツで面白がってもらえるものを、なんとか打ち出していきたいですね。IT・コンテンツ産業の振興を始めてまだ数年ですが、面白いと思ってもらえるものを準備できそうな気がしてます。


高知の食と人が集う場「ひろめ市場」
 
濱口
もともと持っている「おきゃく(高知式歓待)」に代表される飲みの文化に加えて、「いい仕事がしたい」「成功したい」という人を惹きつける魅力を、新しいコンテンツで生み出していきたいということですね。
 
武市氏
企業を誘致しようとすると、当然人材が必要となります。そのためにはUIターンを促したいのですが「高知に行ったら、勉強する機会が減ってしまう」と思われているのも事実。
自分ひとりで学ぶことはできるけど、東京で気軽に参加できた勉強会のような場が地方にはないからトレンドを吸収する機会がなくなってしまうんじゃないか、と危惧している方が多いです。
だから、高知にITコミュニティを作って盛り上げることで、移住のハードルを下げたい。
もちろん県が勉強の機会を作ることもできますが、情報は誰かにお膳立てしてもらうのではなく、自分たちでつかむべきもの。そこで「コミュニティ支援を」という話になったわけです。



 

「精神的脱藩」ができていない、日本のグローバライゼーション 

濱口
CLS(コミュニティリーダーズサミットin高知)はすでに2回開催されてますが、開催してみていかがですか?
 
武市氏
まず高知に人を集めよう、というのが主旨だった第1回。
第2回では「龍馬は高知にいたら坂本龍馬になれなかった」というテーマで、コミュニティがもたらす外のモノサシの重要性を議論しました。
今住む地域から出たり、職場を辞めたりするのではなく、所属している土地や組織への依存度を弱めて「精神的に脱藩」し、外の空気にふれることで視野を広げて行動しましょう、というものです。


キックオフパネル「坂本龍馬はどこで坂本龍馬になったか?-幕末と現代のコミュニティの共通点を探る」

濱口
「精神的脱藩」というキーワードはいいですね。それで言うと、日本のグローバライゼーションって遅れてるなと感じます。
わが社は今年からバンコクに支社を作って活動していますが、日本企業は本当の意味で海外と戦っていないんじゃないかと感じています。業界にもよるとは思いますが、韓国や中国の企業は「自分たちは海外企業」という意識を持たず、現地の企業同然で現地のマーケットを相手に戦っている。
一方日本はというと……。
 
武市氏
日本人留学生同士でかたまっちゃってるみたいな感じですか?(笑)
 
濱口
そうですね。気づいてみればアジアでよく目にするのは韓国製品や中国製品であって、日本製品じゃない。
もちろんグローバルで戦おうとしているとは思いますが、本当の意味での「精神的脱藩」は見られない気がします。
土佐藩に守られたまま海外に進出した、みたいな感じでしょうか。意外な現実を目の当たりにして正直驚いています。
 
武市氏
もう「日本製だから」では勝てない時代なんですね。
 
 

目標とは別に掲げる裏テーマ

濱口
県庁としてマーケティングを進めるにあたって、難しいこととは?
 
武市氏
とにかくマーケティングって、効果がすぐには見えにくい。2手、3手先に効果が現れるものや効果が現れるかどうか判断が難しい実験的な取り組みにお金をかけにくいので、そういう点で難しいです。
また、ステークホルダーが多いので時間もかかります。
 
濱口
CLSは、我々からすればものすごい顔ぶれの招致に成功していて、情報拡散効果はとてもすごいものになっていたと思います。でも人物の持つブランド力は数値化することができないだけに、魅力を説明するのが難しそうですね。


コミュニティリーダーズサミットin高知 リターンズ より

武市氏
そうなんです。あのメンバーが集まることの意味や価値を伝えることが難しい。
 
濱口
なんかよくわからないけど、オッチャンたちが来て、鰹食ってるな、くらいにしか見えないかもしれない(笑)。しかし本当にすごいメンバーが集まっていますよね。
 
武市氏
コミュニティの集いは、すごい人たちとフランクに何でも話せる、とてもいい場。でもそういう文化がまだ浸透していないんですよね。2回やって、ようやく「もったいないな」とみんなが気づき始めたところです。
それをどう説明して広げるかが、今後の課題ですね。
 
濱口
われわれの考える理想のマーケティングは、企業の一番のお客さんが誰なのかを想定して、その人を感動させる、というもの。それができればそのマーケティングは成功だと思っています。
でも県庁だと、そうはスンナリいかないですよね。
 
武市氏
なかなか理解してもらいづらいところですね。表面的には参加人数などが目標値ですが、本心では「この人たちにこう届けばいいな」と考えながら動いています。

今年、とある人材育成のベンチャー企業を招致してイベントをやりました。大学生にまずプログラミングを教えて、それを彼らが中高生に教える、というものなんですが、定員80人に対して200人を超える中高生の応募がありました。





応募がたくさんあったので成功ではあるのですが、講師をした大学生のコミュニティができたことのほうが大きかったですね。
彼らはその後も仲間同士でそういう活動を始めたんですが、そうなると全体が盛り上がってくるんですよね。元気なムードが満ち溢れて、前進する空気感が生まれる。目指しているのはそこです。
広告塔となってくれるファーストピンが生まれつつあるということが一番大きくて、参加人数という大目標の裏テーマとしてそういうことを掲げながらやっています。
そして、この現状こそが今の高知の最大の魅力なんじゃないかと思ってるんです。
今まさに、パッと起き上がろうとする起点にちょうどいる。企業誘致やUIターンを通して、グン!と伸びる瞬間をみんなで一緒に作れたら、どんなに楽しいだろうと思います。
そういう場に立ち会える機会もなかなかないでしょうから、これから貴重な経験ができるという予感にワクワクしますね! この活動を始めて3年くらい経ちましたが、いま上り調子だなと感じられて面白いし、希望が持てます。

 

人と人をつなぐ県庁

濱口
高知の人は、高校を出ると3~5割近くが県外へ出ますよね。でも、人生で大事な時には故郷に帰る人もけっこういます。
 
武市氏
みんな高知県が好きですよね。ポジティブに捉えることができるポイントだなと思っています。
UIターンはできないけど地元を応援したい方やビジネス上地域とつながりのある方など、いわゆる「関係人口」といわれる方々が注目されてきていて、その増加を目指して総務省がポータルサイトを作っています。
県内だけではない、いろんなところの人たちと協力しながら高知を盛り上げる活動ができたら、形としては一番いいと思いますね。
 
濱口
国のエネルギーを生み出すには、東京だけじゃダメ。地方にも元気な街がいくつかないと厳しいですよね。
この夏に行ったドイツは、それがうまくいっていると感じましたね。。人口50~100万人程度の街が多いんですが、どこも働ける場所があってグローバルな仕事もちゃんとある。日本のような中央と地方という感じとは違いました。そういう中堅の街が点在していて、そこにアウトバーンを走らせているんですよね。
 
武市氏
へえー!それぞれの街が何かしらの産業で一本立ちしていて、そこに人が集まってくるんですね。
 
濱口
余談ですが、たまたまフランクフルトで日本料理屋に立ち寄りました。
「レストラン 歌舞伎」という鉄板焼き専門のお店で、目の前でダイナミックに調理をしてくれます。
1989年に創業したといいますから、永い間現地で親しまれているんですね。素晴らしいです。

そのカウンターで高知弁丸出しで妻と話していたら「どちらのご出身ですか」とお店の方に聞かれました。
高知だと答えたら、その青年が「僕もです!」と。「いいのあるんですよ!」と、ダバダ火振を出してくれました(笑)。


レストラン歌舞伎の高知出身 坂本 直幸さんと!

武市氏
ジョン万次郎のような!一度外に出て、力を蓄えてから帰ってくる、そんな人が増えるといいですね。

濱口
戻り鰹ですね(笑)高知だけでなくいろんな地域がそうなっていくと、日本の未来はけっこう変わるんじゃないですかね。



濱口
おしまいに「夢」というとクサくなるけど、「これをやれたらいいな」と思うことを聞かせてください。
 
武市氏
自分も子どもも面白がって高知に住んでいけたらいいな、ということを一番に考えています。
だからコミュニティで地域を盛り上げるのも、適職を作るのも楽しい。「何か面白いことが起きているな!」という環境を作っていきたいんです。
一方で、わが子を含めて、一度県外に出ることも必要だと個人的には思っているし、出たら出たで「関係人口」としてますます強いラインを築けたらいいな、そんな地域を作っていけたら、と思っています。人と人をつなぐ県庁でありたいですね。

濱口
私も関係人口として応援しています。そしてビッグビートには「高知部」という誰でもウェルカムな部活動もあります。メンバーを増やすことで関係人口を増やして、高知に貢献できればうれしいですね。本日はありがとうございました。

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