ニシタイ 西葛西駅前タイムズ

SNS
  • Instagram
  • Facebook
  • Twitter

2019 2019.09.06 【LIVEレポート①】市場創造期/事業転換期におけるWho・What・How

8月2日に開催され、大盛況のうちに幕を閉じたBigbeat LIVE。広告会社が主催するプライベートイベントでは、国内マーケターが集結する国内最大級のマーケティングイベントです。3回目となる今年のテーマは「Go for it!」。
このレポートでは、パラレルマーケター/エバンジェリストの小島英揮さんがホストを務めた1st Stage「真に『顧客の未来』を描く」を前後編でお届けします。前編は小島さんのご紹介、そして株式会社空 松村大貴さんとIKEUCHI ORGANIC 株式会社 牟田口武志さんのプレゼンテーションです。
 

マーケティングはWho・What・Howの順で考える



3回目の開催となるBigbeat LIVEは、まずビッグビート 代表取締役社長の濱口豊、イベントテーマの設定から全体構成を設計した同マーケティングチーム ディレクター 野北瑞貴が挨拶に登場。続いて現れたのは、1st Stageのホストを務めるパラレルマーケター/エバンジェリストの小島英揮さんです。

◆小島さんプロフィール
AWS(アマゾン ウェブ サービス)一人目の日本社員として活躍。日本最大規模のクラウドコミュニティ「JAWS-UG(Japan AWS User Group)」の生みの親として知られる。現在はパラレルマーケターとして複数の会社のマーケティングを様々な立場で支援中。
小島さんのインタビュー記事はこちら


“パラレルマーケター”とは、本業・副業同時並行で、いろいろな会社のマーケティングの支援や相談を行なったり、講演をしたりなど、多彩なマーケティング活動を行うマーケターを意味するそう。今年(2019年)3月には、書籍『コミュニティマーケティング』を刊行しました。

小島さんいわく、「マーケティングと恋愛は似ている」とのこと。「なぜなら、恋愛は相手が決まらないと進まないからです。ところが、小島さんがいろいろな企業で「どういう層が御社の顧客ですか」と質問すると、明確に答えられるケースは非常に少ないそうです。
「マーケティングとは、Who(誰に)・What(どんな価値を)・How(どうやって届けるか)の3つを掛け合わせること。ところがほとんどはこの3つを明確にできていないし、Howから考えるケースも多い。そうすると、結局『リーチ数が絶対』『広告展開だけ』『計測可能なKPIだけで評価しがち』『認知が上がれば良し』という考えに走りがちです」(小島さん)

では、マーケティング最前線の企業では、この3つをどう定義し、実行しているのでしょうか。1st Stageでは、「『市場創造期』『事業転換期』『急成長期』という3つの事業段階において、それぞれどのようにマーケティングを成功させてきたのか」をテーマに、3社の先進企業マーケターがプレゼンテーションを行いました。
 


 

市場創造期におけるマーケティングは「Why」が大事



最初に登場したのは、ホテル向けに最適な客室価格の設定による収益最大化を支援するサービス「Magic Price」を提供し、「PriceTech」(プライステック)というコンセプトを提唱している株式会社空CEOの松村大貴さん。

◆松村さんプロフィール
ヤフー株式会社に新卒入社後、アドテクノロジー業務に従事。2015年に同社を退社し、株式会社空を設立する。航空券の販売事業を皮切りに、現在、ホテルや旅館の価格設定を効率化するプロダクト『Magic Price』を主力サービスとして展開中。今後はホテル向けサービスのグローバル展開を具体的視野に入れながら、PriceTech領域の中で他の事業ドメインへのチャレンジも計画している。
松村さんのインタビュー記事はこちら


飽和時代とは、モノも情報もあふれ、物質的に満たされている時代のマーケティングのこと。かつての大量生産・大量消費の時代と異なり、「拡大」よりは、これまでの資産やサービスの価値を再発見して活用する「価値」が重視される時代です。そんな時代のマーケティングのキーワードとして、松村さんが示したのは2つ。それが「Pricing」と「Why」です。



Pricingとは、自由な価格戦略のこと。「マーケティングの4P」といわれるフレームワークのなかで、これまであまり重要視されてこなかったのがPrice(価格)ですが、価格を戦略的に設定するだけで収益は大きく左右されます。

Whyとは、商品やサービスが持つ価値や意義、選ぶ理由を伝達すること。なぜこのサービスなのか、自社の商品が与える社会意義は何かなど、自社を選ぶ理由を明確にし、メッセージとして伝えることが必要となります。
具体的に、空ではどのようなマーケティング戦略を展開しているのでしょうか。同社では、

Who(顧客):すべての成熟企業のマーケティング・経営企画
What(価値):価格戦略を実践するクラウドサービス
How(どのように):意義・必要な理由(Why)を伝える


という3つの定義を基に、マーケティングを展開しています。

スタートアップである同社が提供する価値は、「価格戦略」というもの。これをマーケティング的に伝えるために、松村さんは「『How』の部分では、まだ誰も気付いていないニーズに名前を付け、新たな市場創造につながるカテゴリーを作ることにしました。そのカテゴリー名がPriceTech」です」と説明します。

「価格戦略はすべての企業に必要なものです。その軸で新たなカテゴリーを付け、その軸で話をしていく。話とは、『PriceTechがなぜ必要なのか』というニーズの訴求で、製品やサービスのPRではありません」(松村さん)

この「まだ世の中にないカテゴリーを作る」ということは、まさに「真に顧客の未来を作ること」と松村さんはいいます。「マズローの5段階の欲求」にあるように、生理的なニーズや安心・安全といった基本的な欲求が満たされてくると、徐々にニーズは高次なレベルへと上がっていき、「自己実現」に達しますが、このレベルで共感できる意義・ビジョンを企業側が示すことで、自社が選ばれるようになります。

それゆえ、Whyは非常に重要なマーケティングキーワードです。

 

松村さんは、「Whyを示すマーケターになるには、Outside-Inではなく、自分自身から生まれるビジョンや価値をInside-Outすることが必要です。それこそ、誰も気付いていない市場を創るマーケターになるためのポイントです」と話しました。

 
松村さんからのメッセージ
顧客に示したいWhyを示せない場合、自分の中のWhyが定まっていないのかもしれない。なぜその会社で働いているのか、なぜその商品は顧客や世界に必要なのか、なぜそれを売っているのか。あなたの中にあるWhyを見つけてInside-Outしよう。
 
 

顧客とのコミュニケーションを重視した事業転換期マーケティング



続いて登場したのは、今治タオルメーカー・IKEUCHI ORGANIC 株式会社 営業部長の牟田口武志さん。

◆牟田口さんプロフィール
映画制作会社に新卒入社。その後、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブのマーケティングや、アマゾンジャパンのWebディレクターなどを経て、IKEUCHI ORGANIC 株式会社に入社する。現在は営業部長を務め、自社のオウンドメディア「イケウチな人たち。」の運営やファンコミュニティの主催、広報までマルチに活躍している
牟田口さんのインタビュー記事はこちら


牟田口さんは、2015年7月に同社に入社しました。「当社はものづくりにすごく熱意を持っている会社ですが、外から見ていると、それがなかなか伝わっていませんでした。そこで、自分のこれまでのキャリアを生かし、何か貢献できないかと思い、入社しました」と説明します。

IKEUCHI ORGANICは創業66年という老舗のタオルメーカーです。ですがその事業は必ずしも順風満帆というわけではなく、いくつかのタイミングで事業転換を行いました。最初は民事再生法を適用した2003年、次にBtoCへの価値訴求を強化した2016年、そしてBtoB強化に向かった2019年です。牟田口さんが説明するのは、そんな「事業変換期におけるマーケティング」です。

同社はそもそも、1999年ごろまでは、OEMメーカーとしてブランドライセンスのタオルを製造していました。オリジナルブランドのタオルも作っていましたが、「知名度も販路もなく、ほとんど売上がない状態でした」と牟田口さんはいいます。

そんな同社のオリジナルブランドタオルですが、2002年に海外の賞を受賞しました。そのおかげで国内の知名度も上がり、これから売上が伸びると思っていた矢先、2003年に大手問屋の倒産に伴い、同社も民事再生法を申請することになったそうです。

民事再生法のニュースを見た同社のファンからは、激励の電話や手紙が殺到。この反応を見た同社のトップが、Who(顧客)をエンドユーザーとし、自社ブランドを軸に事業再生することを決意したそうです。

具体的なHowの部分については、顧客とのコミュニケーションを重視し、トップ自ら展示会に足を運んで地道にコミュニケーションを続け、東京・京都・福岡に店舗を開設。洗濯したタオルを含めて商品を自由に手にとって試せる場を作り、自社ブランドの売上向上を実現しました。

牟田口さんが2015年に入社し、Webを使って等身大の「作り手」の思いや姿を届ける「イケウチのヒト」というインタビューを企画したところ、同社のファンから大きな反応がありました。もともと製品のファンで、企業理念に共感を抱いている人たちが、作り手の顔や人となりを感じることで、エンゲージメントが高くなり、愛媛県にある同社の本社や工場を訪ねるイベントに自費で参加するなど、より企業と顧客の距離が近くなったそうです。


 
そんな同社が、これまでのエンドユーザーを対象にした価値訴求から、OEMやコラボ製品開発などBtoB事業強化に向けたマーケティングに取り組み始めたのが、2018〜2019年です。BtoBの場合、ファンやエンドユーザーと違い、顔が見えないけれど「安ければいい」「今治タオルなら何でもいい」という人から、「IKEUCHI ORGANICだからお願いしたい」という人までさまざまです。

牟田口さんは、ターゲットであるWho、提供する価値(What)、それを伝える方法(How)を以下のように設定しました。

Who(顧客):IKEUCHI ORGANICに共感するファン
What(価値):日常のちょっとした幸せ、豊かさ
How(どのように):オウンドメディアで語ってもらう





こうした思いでスタートしたオウンドメディア「イケウチな人たち。」は、編集部やライター、カメラマンを、自社の価値観に賛同するファンに依頼し、IKEUCHI ORGANICの製品を自社で使っており、ファンであるユーザーに語ってもらう記事制作を開始しました。レストラン、銭湯、美容院、スポーツ業界など、さまざまな業界のユーザーがこのオウンドメディアを通じてつながり、ちょっとしたコミュニティとなって、同社のタオルの紹介・販売に貢献する動きが出始めたそうです。

牟田口さんは「BtoBの方は、これからさらに何らかの良い影響が出てくると思います」と期待を口にしながら、プレゼンテーションを終えました。

 
牟田口さんからのメッセージ
数字の先にお客様がいることを忘れない。お客様、パートナー、自社社員や職人と実際にコミュニケーションすることによって見えるWho・What・Howがある。また、そのコミュニケーションを広げることで新たなコミュニケーションが生まれる。



続く後編では、法人向けクラウド名刺管理サービス市場シェア8割を超えるSansan株式会社より、同社主催のビジネスカンファレンス「Sansan Innovation Project」を2年連続で成功へと導いた松尾佳亮さんのプレゼンテーション、そしてホストの小島さんと登壇者の3名によるパネルディスカッションの模様をお届けします。お楽しみに!
 
Recommend
Ranking
  1. Bigbeat LIVE 第2章 プロローグ
  2. 【LIVEレポート③】 共感を生むための「継続力」と「巻き込む力」
  3. 【LIVEレポート④】 「共感 ∋ 共振」共感が交わる部分に鍵がある
  4. Bigbeat LIVE オリジナルビールができるまで ~Making Story~
  5. カスタマーサクセス×マーケティング ― デジタル時代の三方よし!
Mail magazine